第5部 ラビがやってきた!
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ラビがやってきた!

待ちに待ったWさんからの連絡が入りました。
「今、○○まで来ました。そちらまであと10分位だと思います。」

「分かりました、お待ちしてます。」
私は受話器を置くとベッドルームの窓際に直行しました。
ここからマンションの駐車場と道路が見渡せます。
私は今か今か、と窓にへばりついていました。

「来た、来た!」その声で妻もすっ飛んできました。
見覚えのある白いミニバンがカーブを切りながら駐車場に入って来ました。
車はゆっくりと来客用駐車スペースに向かいます。
助手席にはラビがちょこんと座っています。
少し得意そうに・・・
「助手席に座ってる~」「いばってやんの!」「カワイイね~」
私達は窓越しに眺めながら大はしゃぎでした。


1996年7月10日、ラビが我が家にやって来ました。
幸せな10年の始まりでした。

ラビは我が家に何のためらいもなく あがり込み、我が物顔で部屋をチェックし始めました。
・・アラ この部屋は何?・・お客様そこは浴室です・・
開けて下さいな・・ラビ奥様は好奇心いっぱいのようです。
私達が居間で話してる間もラビはあちこちチェックに余念がありません。
Wさんからラビの身の上、これまでの預かりの経過を伺い、私はノラのいろいろな話をしました。
アルバムのたくさんのノラの写真を見てWさんはとても安心なさったようです。
「ラビはいい家にもらわれてホッとしました。」と言って下さいました。
一通り歩き回って居間に戻って来たラビはWさんの元にいくでもなく部屋の真ん中に横倒しになり、くつろいでいる様子です。
私がラビを抱きかかえてなぜているうちに、Wさんは気づかれないようにこっそり帰る、という事になりました。


ラビは私にすっかり体を預け、リラックスしています。
「これなら、すぐうちの子になれるな」
ラビをひっくり返してお腹をさすりながら、私はお気楽な事を考えていました。


でも、そう簡単にはいかなかったのです。



「帰して下さい!」

Wさんが帰られた後もラビは自宅にいるかのように落ち着いて横になっていました。
やがて、ガバッと起きあがるとWさんを捜し始めました。
そして・・・
Wさんのいない事に気付くと、ヒ~~~ン とカン高い悲鳴とともに玄関に向かって突進したのです。
それはそれまでのマッタリした動きとはうって変わったものでした。
すぐ後を追うと、ラビは忙しく床のタイルを嗅ぎ回り、時々ドアを引っ掻いたりしています。
「ラビ、ラビ」声をかけると、彼女は耳をねかせ頭を垂れてオドオドした様子で私を見上げました。

「そこは暑いよ」とラビを抱き上げ居間に連れていきました。
幸いラビは暴れたりするような様子はありません。
落ち着くように穏やかに話しかけながら体をさすってやると、一応彼女はそれを受け入れます。

が、先程までのようなリラックスした様子はなく、すぐに起き上がるとお手、お手、の仕草のあと私を玄関に導きます。私はラビを抱いて居間に戻ります。
これが何度も繰り返され 彼女は玄関のタイルの上で夜を明かしました。
それは3日間続きました。


散歩に出かけるとラビは、まず来客用駐車場に一直線に向かいました。
そしてあたりを嗅ぎ回り私を見上げます。
「ここにあった車はどうしたの?」と・・・
それが1週間くらい続きました。

さぞ帰りたかった事でしょう。出産をし、8頭の子を育て、半年以上暮らしたWさんの家・・・・そこにはまだ2頭の子供もいるのです。
彼女が来客用駐車場に行くのをやめた時、その気持ちはどんなものだったのでしょう、私達となじんでくれたから? それとも、あきらめ・・・・
「なんか私達、酷な事してるみたいだねぇ」
妻も切なそうです。

その頃から今度はラビは私から一時も離れなくなりました。
ちょっとの移動にもつきまとい、私はラビにつまずかないように気をつけねばなりませんでした。
それでも私が顔を近づけると彼女は目をそらします。
ラビも新しい生活を受け入れるのに懸命だったのかもしれません。

ただ幸いな事に私達は在宅の仕事でしたので、ラビをひとりぼっちにさせることは避けられました。
いつもラビに話しかけ、不安がらないよう心がけました。
今にして思えば、これは私自身のペットロスを癒す事にも繋がっていたのかもしれません。

ラビが私の鼻を舐める事が出来たのは、まだずっと後のことでした。

【コラム】③ ラビのテーマ

ラビのテーマ曲です。
自画自賛で厚かましいのですが、ラビにぴったりの歌と、気に入ってます。
ハワイアンの《小さな竹の橋》の替え歌です。
(知らない人はお父さん、お母さんに聞いてね、)
ラビは嫌がりますが「飼い主のおバカにつきあうのも犬の大事なお仕事、お仕事、」とフラダンスをさせながら歌います。



マイミクの〈だいきち〉さんに「ラビのテーマソングがあるんだ」と聞いてもらったことがあります。  

(この方の脳は犬関連物質であふれているので、私も平気で飼い主バカを発揮してしまいます。)

彼女は「あっ、元歌 《小さな竹の橋 》でしょ」と、踊らされているラビを見ながら初めは笑ってらしたのですが、そのうち顔をしかめ、ぽろぽろ泣き出してしまいました。
「アララ・・?」私は困惑してしまいました。

〈だいきち〉さんが言うには「いつの日かぽこぺんさん(筆者)はラビを思い出しながら、この歌を口ずさむんだろうな・・」と想像してしまい、泣けてしまったとの事。
ウケると思ったんだけど・・・・

いつでも どこでも、ワンコにすんなり同化してしまうような人なので、ラビのはかなさを垣間見てしまわれたのかも知れません。

「いつの日か・・」はこのあと2年半後にやってきました。
上品で美しく、穏やかで、賢い犬でした。



第6部「家族になったラビ」につづく

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