第4部 ラビとの出会い
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ノラを失って・・・

ユーミンの曲「何もなかったように」・・年老いた犬を見送る気持ちを歌っています。
メロディが好きで仕事中、バックミュージックとしてよく流していましたが、歌詞をじっくり聞いたのは、ノラを亡くしてからの事でした。

♪ 本当の光に 満ちてた頃が いつかを知るのは 
  過ぎ去ったあと ♪

ノラの存在がどれ程大きいものだったのか、それはノラを失ってみて、あらためて思い知ることになります。
それほど大きな喪失を受け止める覚悟は出来ていませんでした。
ペットロスがきついと言っても、時間が経てば次第に薄らいでいくだろうと思っていたのです。
しかし安定剤を服用しなければならなくなり、さらに薬量が増えてくると
「オレはこのまま治らないんじゃなかいか・・・」と、
さらに不安が増すというマズイ状態に陥ってしまいました。
私はペットロスを自力で克服出来そうもありませんでした。

・・・犬を飼おうかな・・・なんとなくそう思い始めた頃、犬の保護活動家のドキュメンタリー番組を見ました。
・・・決めた! 犬を飼おう・・・
妻はノラの一周忌が過ぎるまでは犬は飼わないと宣言しています。
しかし私はもうそれまで、待てませんでした。
「愛犬チャンプ」と言う雑誌の里親募集ページを見て、免許証を手にボランティアのWさん宅を尋ねます。
《かわいそうな犬を引きとるのだ》と言う建前・・・本心はワラをもつかむような、すがるような気持ちでした。

そこにラビとその仔犬達が居ました。

そしてラビが我が家にやってくる事になります。




ラビの出産

'95年、年末、ラビは横浜で保護され師走の寒空の下、トラックのむきだしの荷台に載せられWさんの所へやって来ました。
Wさんは猫の預かりしか経験が無かったのですが、犬の一時預かりの人手が足りないため、臨時に引き受ける事になりました。

満足な準備もできないまま引き受ける事になったため、ラビを獣医に診せるのが後回しになったのは仕方の無い事です。
結局ラビの診察は正月が明けてからになってしまい、その時大変な事が判明しました。
ラビは身ごもっていたのです。

「一ヶ月近く経ってるようだ。この状態での避妊手術は子宮付近からの大量出血の恐れがあって危険だな。」獣医は手術は出産後の方が良いと診断しました。
「仔犬は生まれたらすぐ苦しまないように処分してあげるから・・・」

びっくりして保護ボランティアの仲間に相談しますが、リーダーの指示は「今すぐ手術するように」というものでした。
初めて預かった犬のことで大変な難題をつきつけられたWさんはどちらの指示にも従う事は出来ませんでした。
『生ませて、育てて、里親を捜す』という結論を出します。
自信は全くなかったけれどWさんにはそれ以外考えられなかったそうです。

2月4日夜、ラビの出産が始まりました。
中型犬の生む数はせいぜい4~5匹と思っていたので4匹目、5匹目・・・6匹目と続き、まだ後がありそうな様子が見えた時Wさんはさすがに後悔し始めていました。
翌朝、さらに増えて、生まれた仔犬は9匹! 
オッパイは7つしかないのに(ラビの乳首は左右比対称でした)
1匹は死産、そして右前足欠損の子が1匹・・・・
8匹の仔犬にオッパイは7つ、オッパイにあぶれるのはどうしても3本足の子、 彼はほとんどWさんの手で育てられることになります。

ラビの仔犬たちは全頭白犬でした。mixなのにめずらしいことです。
きっと父親も白犬だったに違いありません。
4月頃になると毎朝彼らを屋上で運動させるようにしたそうです(Wさん宅は一階がお父様の事務所、二階が住居用で屋上付きの建物でした)。

Wさんは当時を振り返り懐かしそうに話してくれました。
朝陽の中、9頭の白犬の群れが走り回る様は それは壮観な眺めだったと・・・
そしてラビは挑みかかってくる仔犬達を一頭一頭押さえつけ、マウントし、口や首筋を柔らかく噛み、母として、ボスとしての威厳をしっかりと示していたと・・・
ああ、この目で見たかったものです。

Wさんはせっせと仔犬の里親を捜し、6月後半には仔犬は2頭が残るだけとなっていました。
ペットロスでヨレヨレになった男が 犬を求めてWさん宅を訪れたのはその頃の事でした。





リュウとの出会い

「どのような犬をお探しですか?」Wさんに尋ねられ、私は10~12キロくらいの出来れば柴系mixを・・と答えました。
預かりのボランティア仲間をあたれば、そのタイプなら見つけるのにそう時間は掛からないだろうとの事。

「今ウチに居るのは白い犬の親子3頭なんですが、母犬はちょうど今手術で入院中なんです。仔犬、ご覧になりますか?」

その頃の私は赤鼻の白い犬は好みではなかったのですが、一応その2頭の子犬に会わせてもらう事にしました。

部屋の外に2頭の仔犬が勢いよく飛び出して来たとたん、彼らはもつれるように、戯れながら外階段を駆け上り、すぐさま、 また駆け下りてきました。
そして よそ者の私に気がつくと一頭は警戒してWさんの背後に、一頭は私の前に嬉しそうにやって来て座りました。
可愛さのあまり、思わず手を伸ばした瞬間、背中に冷たいものが走ります。

「3本足!」

元気いっぱい走り回っていたので 気付かなかったのです。
その仔犬には右前足がありません。
とっさのことに固まってしまった私に、彼は「ウォフ」と小さく吠えました。座れと言っているのです。
私は言われるままにヘナヘナと腰をおろしました。






リュウ、それが彼の名前です。

リュウは一本しかない前足を、私の膝にかけて伸びあがり私の顔を2度、3度と舐めました。

フワッと体が温かいものに包まれたような気がして・・・私はいっぺんにこの仔犬に捕まってしまいました。
想定外の事に私の頭の中は色々な思いが錯綜します。

「もらっちゃえ!」「いや、赤鼻は趣味じゃないし・・」
「でもそれも可愛いぞ」
「柴系mixを探してもらう事にしたし・・」
「3本足だよ、ちゃんと飼える?」「カミさんの説得が・・」

「この子、ください!」と言いそうになるのをグッと抑え、「今度、妻も連れてきますから」

Wさんにそうお伝えして、その日は帰宅しました。


 

お母さん犬 もらおうか

妻は、ノラの喪が明けるまで犬は飼わないと宣言していたので、説得はそう簡単にはいきません。
「でも可哀想な子だよ。他の子はもらわれたのに、あの子のもらい手は見つからなかったって・・・」
私は泣き落としまがいの手で妻に一緒に行くということだけは承諾してもらい、二人でWさん宅を訪れました。

Wさんがドアを開けると、リュウが飛びついてきました。
もう一頭の「ムク」と言う子はシャイで近寄ってきません。
後から腹帯を巻いた、かなり大きな白い犬がノソ~と出てきました。
大きさ以外はリュウとそっくりです。
「今日母犬のシロが退院して来たんですよ」
シロは手術後で気分が優れないのか、無愛想で動きもダルそうです。

この時の事を、妻は今でも自慢そうに話します。 
初めて会った時、ラビ(シロ)はゆっくりと妻に近づいて、ちゃんとアイコンタクトしてくれたのだそうです。
私はリュウと遊ぶのに夢中で気がつかなかったのですが・・・・  


妻はハンディがありながら、のびのびと育ったリュウを見ているうちに気持ちが揺らいだようです。
「NO!」とは言わず「帰ってもう一度良く考えようよ」と言ってくれました。
帰宅後、私達はリュウを飼う事を前提に話し合いましたが、ハンディのある犬を飼うことに、一抹の不安があってなかなか決断出来ません。

私はノラが世話になった獣医に相談します。
「走ってるの? その子、じゃ問題無し、歳とってからの事? ノラを介護したじゃない、あの気持ちがあれば大丈夫、もらいなさいよ」
ポンと背中を押してもらえた気がして、気持ちが固まります。

リュウを引き取りたい旨、お伝えするとWさんはたいそう驚き、大喜びして下さいました。
その夜、私達はリュウをもらったらああしよう、こうしよう、と遅くまで話し込んでいました。

ところが翌朝になると「本当に申し訳ないのですが・・・」
Wさんから断りの電話が入りました。

聞けば、授乳期のリュウは兄弟とのオッパイ争奪戦でいつもあぶれてしまい、ほとんどWさんが ミルクを与えて育てたとのこと・・・
私がリュウを欲しいと申し出た事で、改めて気付かれたようです。
仕方なく飼っていたつもりのリュウがWさんにとって手放せない大切な家族になっていたという事に・・・

もうリュウを貰ったつもりになっていた私達はすっかり拍子抜けです。
ふと私は母犬のシロの事を思い浮かべていました。

・・ちょっとウチには大きすぎるけど、ほんとにリュウとソックリだったな・・

「あのお母さん犬もらったりして・・」私は冗談めかしてつぶやきました。
てっきり妻に「節操なくコロコロ変わって、犬なら何でもいいの?!」と言い返される、そう思っていた私に意外な言葉が返ってきました。

「私もそう考えてたところなの」

こうして2週間後、シロは我が家にやって来ることになりました。
名前は先代の「ノラ」から一字もらい、彼女のこれまでの苦労を想い、ラビ・LA VIE(仏語で人生の意)としました。
ですから正確には、ラヴィと書くべきなのかも知れませんが・・・

 

【コラム】② ラビのおもしろ顔

おもしろ顔①



おもしろ顔②




鼻輪は柔らかい素材です。
ちょっとでも動けば落ちてしまうくらいヤンワリつけています(虐待じゃないです)。

お尻自慢


第5部「ラビがやってきた!」につづく


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